平成30年9月定例会一般質問

 午前10時過ぎから登壇し、9月定例会の一般質問を行いました。長くなりますが一読いただければ幸いです。以下、質問と意見・要望を全文掲載します。ご意見などがあれば書き込んで下さるようお願いいたします。

 

<質問>

 大項目として「次期総合計画について」と題して一括して質問いたします。
言わずもがなですが、まちづくりの最上位計画として市政の大きな方向性を指し示し、市民生活にも大きな影響を与える総合計画をより良いものとするために質問するものです。市長、関係部長に置かれましても懇切丁寧な答弁をお願いいたします。
さて、今回は次期総合計画について質問しますが、総合計画は、平成23年地方自治法の一部を改正する法律により策定の義務化の文言が削除されました。従って総合計画を策定するかどうかは自治体の判断に委ねられることになり、議会の議決の有無も含めて総合計画を策定する際の手続きについても自治体が決めることになりました。
このような地方自治法の一部改正がありましたが、皆様ご承知のように、大和市では現在次期総合計画を策定中です。6月定例会で議員に配布した説明資料によると、全国の市町村の間では、現在でも従前と同様に総合計画を策定している状況がみられるという理由で、大和市でも次期総合計画を策定する作業が進められています。
また、議会が議決すべき事件として、大和市総合計画の基本構想の策定、変更または廃止を定めるべく条例案が付託され、9月定例会の本会議で可決されました。
そこで、最初になぜこのような地方自治法の改正が行われたのか、その背景を整理したいと思います。平成25年3月に発表された公益財団法人東京市町村自治調査会による「市町村の総合計画のマネジメントに関する調査研究報告書」によると、平成19年の地方分権改革推進委員会による「地方分権改革推進にあたっての基本的考え方~地方が主役のまちづくり~」で、個別法令による地方自治体に対する事務の義務付けを撤廃、緩和するよう見直しする方針が打ち出されたとあります。その後の経緯を経て、平成23年地方自治法の一部改正につながりました。
その目的としては、「法律の義務に応じた計画策定から、住民本位の計画策定への転換が図られ、市町村の自主的取り組みとしての総合計画に生まれ変わること」が求められていると指摘しています。
しかし実態としては、市町村によっては、従来の総合計画が十分に機能しておらず、形骸化している例が多いということによると推測します。また総合計画の策定・運用に係るコストに見合う成果を求めることのきっかけとしようとする意図も感じられます。
そこで第8次の大和市の総合計画の計画内容と運用を私なりに評価させていただきますが、一般的に総合計画策定に重要な視点として以下の4つがあげられます。
まず1番目に計画策定のプロセスです。計画策定のプロセスにおいて、市民参加機会と意見反映、職員の参加機会の充実などがあげられますが、大和市の場合は、アンケートや市民討議会などの市民意見の聴取が十分に行われており、庁内でも検討会議が数多く行われています。
 2番目に運用における課題です。総合計画は一般的に総花的になりやすいので、施策体系とは別に施策や事業の優先順位を明確にする重点プロジェクトを提示する例があります。その点では大和市の総合計画では、重点プロジェクトが提示されておらず、優先順位がわかりづらくなっています。しかし、反対に提示されている個別目標すべてを重点プロジェクトとする市の意気込みとも捉えられます。
 3番目に進行管理です。第8次総合計画では、個別目標毎に目指す成果としての数値目標を掲げていますが、これも画期的と評価します。私もある省庁の施策目標として数値目標を整理する仕事をしたことがありますが、大変な作業でした。この目標をPDCAサイクルの核として進行管理することにより、常に反省と業務改善を積み重ねることができます。重要なことは実際のPDCAサイクルがあるべき姿としてきちんと廻っているかどうかです。
 4番目に総合計画が財政運営の指針、あるいは基礎となることです。大和市の総合計画は基本構想、基本計画、実施計画の3層構造となっていますが、実施計画では個別目標毎に主要な事務事業を掲げ主な取り組みや事業費を示しています。また3番目に示した進行管理と絡めて、事務事業評価書も膨大な作業の結果として整っています。具体的には平成29年度の921事務事業に関して、市の関係の妥当性、事務事業の成果、事業費・人件費、受益負担の公平性、社会的配慮の項目ごとにA,B,Cの3段階」評価を行った上で、今後の方針として、Ⅰ.現状のまま継続、Ⅱ.見直しのうえで継続、Ⅲ.廃止または終了の評価を行っています。
以上の4つの視点から大和市の8次の総合計画を改めて評価させていただくと非常に素晴らしい内容であると大いに評価します。
以上の前提の上で、中項目1として総合計画策定の意義と策定プロセス、中項目2として次期大和市総合計画の基本構想案、中項目3として前期基本計画における計画の体系、中項目4として個別目標毎のめざす成果について質問します。

最初に中項目1として、策定の意義と策定プロセスです。最初に申し上げましたが、平成23年地方自治法の一部改正により、総合計画の策定義務化の項目が削除されました。策定義務化が削除された中で、改めて大和市で総合計画を策定するにあたって、市における総合計画の位置づけと役割と運用の仕組みを明確にして市民に説明する必要があると考えます。従前と同じということであれば、これもきちんと整理して表明すべきと考えます。
 そこで中項目1の小項目1として、今回策定する総合計画の大和市における位置づけ、役割、運用について改めてお聞かせください。

 次に、策定プロセスについてお聞きします。先ほど市民参加機会と意見反映、職員の参加機会の充実、アンケートや市民討議会などの市民意見の聴取が十分に行われており、庁内でも検討会議が数多く行われていると評価しました。
8次計画では市民意識調査5,000人、大和市民まつりの際のアンケートやeモニター、市民討議会、再度の市民アンケートなど充実した市民意見の聴取が行われました。さらに庁内検討会議も数多く開催されました。
 そこで小項目2として、8次計画に対して、次期総合計画における市民意見聴取、庁内会議、議会説明などの策定プロセスにおいて工夫した点についてお聞かせください。
 次に中項目2として次期大和市総合計画の基本構想案についてお聞きします。
最初に小項目1として、ピーク時の人口を2023年の約24万人と想定していますが、2028年も約24万人と想定しています。2023年から28年までの5年間でほとんど減少しないということでしょうか。

 次に3つの健康領域である、人、まち、社会の健康領域を掲げていますが、これは8次と同様です。基本目標は8次計画が7つの基本目標であったものが8つになっています。内容を見ると、新たに基本目標2の「一人ひとりがささえの手を実感できるまち」と基本目標4の「未来に向かうこどもの学びと歩みを支えるまち」が追加されています。反対に8次の基本目標4の「環境を守り育てるまち」と5の「快適な都市空間が整うまち」が統合されて、次期総合計画では基本目標6として、「環境にも人にも優しい快適な都市空間が整うまち」を掲げています。
 この意図としては、近づく高齢社会に備えて、ささえあう社会を構築する必要性が高いことと、子供学習、教育については重点領域として新たに独立させたものと理解しています。
 そこで、小項目2として、市として、基本目標の新設、組み換えをどのような意図で行ったのかお聞かせください。

基本構想における健康な行政経営の項目においては、財政運営の方向性において、少子高齢化、人口減少、社会保障関係経費の増加などにより、今後状況がさらに厳しくなると記述されています。これに対応して、方針2の「即応性の高い行政経営の」項目で、事務事業の見直しや歳出の最適化等により健全な財政運営を維持するとともに、複雑化する行政課題に横断的に取り組む庁内連携の強化、情報技術の活用などによる業務の効率化、計画的な修繕等による適切な財産管理等を継続的に進める」と記述しています。この記述は8次に比べると、具体性が加わったものと評価します。
私も3月定例会において、大和市の行政運営について大胆なAI活用を行い、事務改善を図ることによる生産性向上を行うべきという質問をしました。
そこで小項目3として、次期総合計画における事務事業の見直しについて市の考えをお聞かせください。
さらに小項目4として、情報技術の活用などによる業務の効率化の考え方をお聞かせください。

 次に中項目3として前期基本計画における計画の体系についてお聞きします。
最初に人の健康を取り上げます。
個別目標の「高齢の方や障がいのある方への支援を充実する」におけるめざす成果においては、8次計画では「必要な介護サービスが受けられる」という記述から「高齢の方やその家族が、不安・負担を取り除くために必要な支援を受けられる」という記述になっています。これは今後の介護サービスなどの社会保障関係経費の増大を見越して、地域全体で支えあう構造へと転換するための表現と推察します。また、先ほど述べたように、「未来に向かうこどもの学び歩みを支えるまち」の基本目標を掲げ、個別目標として「こどもの広がりある学びを育てる」「こどもの豊かな心・健やかな体を育む」を目標としています。
そこで小項目1として、人の健康に関する基本目標、個別目標について市の狙いや考え方をお聞かせください。

次にまちの健康についてお聞きします。
まちの健康の個別目標におけるめざす成果を見てみると、細かい表現で、従前よりポジティブな表現が目につき、この点で大いに評価します。例えば「地域交通の利便性が向上している」という表現から、「地域交通の利便性が確保されている」という、より積極的な表現となっています。
そこで、小項目2として、まちの健康に関する基本目標、個別目標について市の狙いや市の考えをお聞かせください。

社会の健康については、8次計画と次期総合計画とでは、めざす成果の記述において、ニュアンスがよりポジティブになっている項目はありますが、大きな変化は見受けられませんでした。そこで改めて小項目3として社会の健康に関する基本目標、個別目標について市の狙いや考え方をお聞かせください。

 次に中項目4として、個別目標毎のめざす成果に関してお聞きします。8次計画では、最初に私が画期的と評価したように成果を計る主な指標が掲げられていました。しかし、次期計画の原案を見ると定性的な記述となっています。
一方、各年度に行われる事務事業評価では、事業ごとに総合計画の施策体系と関連付けて整理し、事業の数値目標を示した上で、評価を行いPDCAサイクルに繋げています。
 しかし、第8次総合計画で示した成果を計る指標は、総合的な成果目標としての指標や、市民アンケートなどでしか採集できない指標が多いこともあって、事務事業評価書には、この成果を計る指標がほとんど登場しません。
 私もこのような業務を多少経験しているので、総合的な成果目標を掲げてPDCAサイクルを廻すのは多くの困難が伴うことはある程度は理解しています。
 しかしながら、達成目標を明確にし、総合計画としての進捗管理PDCAサイクルを廻すためにも具体的な数値目標は不可欠と考えます。
 そこで質問です。小項目1として、現在策定の途中段階ですが、今後、次期総合計画においても成果を計る指標を掲げるのかどうかお聞かせください。定性的目標とするならば、その理由も併せてお聞かせください。
 小項目2として、8次総合計画の集大成として「成果を計る指標」のPDCAのうち、Cのチェック、Aのアクションを行うのかどうかお聞かせください。

<意見・要望>                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

 今回の一般質問は、次期総合計画をより良いものとするための思いを込めて質問させていただきましたが、さらに質問しきれなかった部分も含めていくつかの意見、要望を述べさせていただきます。
繰り返しになりますが、非常に丁寧な答弁で、大和市の将来とそのための行政運営を行うための熱い思いを、次期総合計画に込めようとする思いが十分に伝わった内容だと思います。
総合計画の位置づけや役割、運用についての説明や、基本目標の組み換え、ひと、まち、社会の3つの健康領域の狙いなど丁寧に答弁して頂きました。
また、次期総合計画においても数値目標を掲げることや、PDCAサイクルの中で、事務事業評価を含めた改善に努めること、さらに8次総合計画の統括的な評価を行うことなども大きな評価をさせて頂きます。
このような大和市の将来像と行政運営のありかたを指し示す次期総合計画について、丁寧な説明を大和市民に対しても十分に行い、住民の理解と協働の意識を持っていただく幅広い広報を行っていただくことを第1に要望します。
2番目に、市の行政計画は、社会状況の変化やニーズの変化に対応する柔軟な対応と継続性を併せ持ったものとする必要があります。その意味で次期総合計画においても、基本構想を重視しつつ、3層構造の基本計画、実施計画での今後の弾力的な対応を要望します。
次に、原案を読み込んだ上で、私なりの次期総合計画に対する意見要望を述べさせて頂きます。

 3番目は、基本目標8の「市民の活力があふれるまち」についての要望です。
8次では、「商店街や企業などの活発な経済活動は、人々を呼び込み、地域に活気とにぎわいをもたらします。」と記述されていましたが、次期総合計画では「買い物など便利で暮らしやすい生活を支える機能を維持しながら、まちの魅力を高め、交流人口の増加や市民の定住志向の向上につなげるとともに、本市の実情を踏まえたまちの賑わいの創出、経済の振興を図っていきます。」と記述されています。
その趣旨は、市民主体の目線で記述したことの結果だと推察しますが、その結果として商店街や企業活性化のキーワードが記述されていません。市民目線は非常に重要だと思いますが、大和市内には多くの商店街や商業を営む方々、さらには多くの企業が頑張っています。
 私は大和市において、歳入拡大のためにも、活力にあふれバランスある地域社会の実現のためにも、商店街振興や産業振興の施策をより積極的に推進することが必要と考えています。幸い産業振興については、企業活動振興条例の制定により環境が整いましたが、これから重要プロジェクトとして推進する必要があります。
 そこで基本目標8の中で、大和市内の商店街や商業者の方々、さらに市内企業を勇気づけるような表現を工夫して頂くことを要望します。
 4番目は、前期基本計画の概要における土地利用の方針についての要望です。
今回の記述内容として8次計画にあった土地利用や建物に関するルールづくりが削除されています。私は却ってこれからの大和市の土地利用においては、都市機能誘導や抑制、民間活力誘導などのためにも土地利用や建物に関するルールの重要性が増すと考えています。行政も財政制約が強まる中で、行政目的に沿った地域整備や建築整備を行う場合、特に民間にもメリットを持たせたうえで開発誘導する方法は数多くあります。
 次期総合計画における表現を工夫して頂くとともに、次回策定される都市マスタープランにおいて、今述べた考え方も反映させる土地利用や建物に関するルール作りを検討して頂くことを要望します。
 この都市マスタープランに関してですが、総合計画の内容については大いに評価するところですが、個人的には大和市の都市マスタープランは、少し改善の余地があると考えます。
そこで次期都市マスタープランを策定するにあたっては、もう少し踏み込んだ検討を付け加えることを要望します。具体的には、都市マスタープランを実現させる取り組みの要素が少ない点が気にかかります。また、地域ごとの課題についても踏み込んだ議論が必要と考えます。
例えば、空き家対策でも、つきみ野で進むスポンジ化現象と、個別住宅の空き家では対応策が異なります。空き家問題だけでなく、将来発生する都市的課題を地域ごとに想定し、その対応策、カルテなどを含めて議論を深め、その結果を反映することに努めるような取り組みを期待し、要望します。
5番目に財政運営についての要望です。財政運営については、企業会計ではロングレンジで将来の収支見込を予測して経営計画を策定するのが当然のことです。現在、市の実施計画においては、3ヵ年の財政見通しを作成していることは、私も承知しておりますが、私の持論として、市の財政運営においても、ロングレンジでの歳入歳出の見込みを作成したうえで、実施する事業の具体的な検討を行う必要があると考えております。そこで、市におきましても10年程度の歳入歳出見込の作成を行い、行政経営に活用していくことを要望いたします

6番目に個別目標におけるめざすべき成果の項目について要望します。
まちの健康の個別目標における「環境を守り育てる」に該当する「めざすべき成果」において、8次計画で記述されていた「身近な農地が大切にされている」という文言が削除されています。
 私は平成27年の12月定例会で生産緑地に関して一般質問しました。生産緑地の指定から30年が経過する2022年問題を取り上げ、今後も保存方向で考えるべきであるという視点で質問しました。その時の市長答弁では、「人口減少が進む中、宅地予定地としての位置づけも低下していることから、都市農地を保全、活用すべきとの国の報告もある。今後国が示す施策、税制上の措置等を注視しつつ、生産緑地を含む都市農業の保全、活用方策について調査研究していく。」と述べています。
国や地方自治体では、その対応を始めており、農林水産省では生産緑地を貸しても税制優遇が受けられる法律が施行されます。国土交通省では生産緑地の面積要件を引き下げられるようにしました。これを受けて面積要件を引き下げる条例を制定する自治体も出始めています。このように2022年も近づき、これから生産緑地への行政的取り組みが本格化する段階を迎えようとしています。
そこで、まちの健康に関するめざすべき成果として、農地の中でも大きな変化のインパクトが予想される生産緑地を念頭に検討を深め、「身近な農地が大切にされている。」あるいは同じような趣旨の文言を付け加えることを要望します。
 7番目に、PDCAサイクルを廻す場合の改善について要望します。改善を図るためには、事務事業評価が重要な役割を果たします。その作業は膨大で、担当セクションは大変な事務量だと思います。その結果として今後の方針として、現状として継続、見直しの上で継続、廃止または終了の評価を行っていることは質問部分でも触れました。しかし、重点評価事業としての事務事業に関しては、廃止または終了の事業が1つのみでした。廃止または終了の評価は、921事業全体では、23件で全体の2.5%でしたが、これは施設整備などの事業が終了した場合や明らかに不必要となった事業が大半です。
 重点事業ですので、廃止または終了に該当しない事業のみだとは思いますが、増え続ける事務事業の質を確保し、改善、効率化を図る必要があります。答弁にも事務事業評価を含めた改善に努めるとのことでした。そのためにも勇気をもって廃止または終了の評価を判断することや、他の事務事業との統合や効率化なども併せて検討することを改めて要望します。
次期総合計画が、大和市内の住民、企業などにとって大きな指針となるような高い水準となることと、そのための熱い思いを共有することを期待して、渡辺伸明の一般質問を終了します。ご清聴ありがとうございました。